白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第3章 消せない昔、消えない今(前)
「"なんで?"って顔しないでよ
キミが普通に出来ないなら
俺が視界から消えるしかないじゃん
気にしなくて良いから」
困った顔のまま私に背を向けて
出て行ってしまった
『…何やってんだろ…
あの人は悪くないのに…』
一人になった給湯室
ホッとした事にチクチク痛む胸
変なの
なんでこんなにモヤモヤするんだろ
男の人の困った顔くらい
今まで沢山見てきた
私の扱いに困る人は多いから。
でも、胸が痛んだ事はなかった
離れてくれてラッキーくらいに思ってた
鉄朗が困った顔をしなければ
それで良いと思ってたのに
なんでチクチクしてるんだろう。
罪悪感が取れないんだろう。
考えても考えても答えは出なくて
とりあえず二人分コーヒーを淹れ
及川さんの方には
誰かが出張のお土産で買ってきた
お菓子を付けて席に運んだ
「お菓子?」
『…あの、お腹空いたって言ってたから…
空腹の足しにはならないかもですけど…』