第3章 消せない昔、消えない今（前）

「…うん、姫凪のリアクションで
全部分かった。
じゃあ、今日は姫凪もクロも
おれに逆らえないね
あ、そうそう。
クロとはまだ挨拶しかしてないよ
いつもより余所余所しかったから
先に姫凪にカマ掛けただけ」

…私のバカー！
なんであんな分かりやすい事を…！！
てゆっか研磨くん相変わらず
鋭いというか狡猾というか…

『…少々お待ち下さい。
すぐお持ちします…』

勝てる気がしない。
勝とうなんて思う気すら
根こそぎ薙ぎ倒されるよね…

山積みになった
資料整理の仕事を気にしつつ
給湯室に歩こうとする私を

「ほら、孤爪。
コーヒー入れて来たから飲めよ
布施さん困らせんな
もう行って良いから
仕事して、布施さん」

赤葦さんが止めた

「赤葦のコーヒーとか
毒盛られてそうで嫌だ
姫凪のが良い」

「毒盛られる心当たりあるのかよ
財布目当ての女狐に媚薬盛られる前に
俺のコーヒー飲んでろ」