白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第3章 消せない昔、消えない今(前)
「姫凪…いや、何もねぇ
まだ余裕あるんだから
慌てて来て怪我すんなよ?
キツかったら言え
振る仕事考えっから、な!!」
『仕事場では甘やかさないのっ
大丈夫!女の子の日近いから
少し身体がダルいたけだから
鉄朗も気を付けてね
また後で!』
手を振ってマンションに逃げる様に
駆け込んで大きく深呼吸をする
大丈夫、もう忘れる
及川さんだって
すぐ宮城に帰って会わなくなる
そしたら全部元通りになる
揺れてない
私の気持ちは鉄朗にしかない
鉄朗と幸せになるって
決めたんだから。
部屋に入り
新しい服に着替える
パリッとアイロンの掛かった
シャツのおかげで
少し伸びる背筋
『及川さんにも
普通に…しなくちゃ。
これ以上迷惑掛けられないもんね』
鏡の中の自分に話し掛けて
少し早めに家を出た
更衣室で洗いたての
仕事着に着替え
いつもの部屋に入ると
キューティクルが憎らしい程ある
長い髪の毛が蹲って
私の道を塞いでいた