第36章 一松とハッピーエンド
―それは、¨彼¨と結ばれた次の日の昼下がり。
私は朝からとても困っていた。
「一松」
「……」
「一松ー」
「……」
「一松さーん?」
「……何?」
「そろそろベッドから下りたいんで、離してくれると「嫌だ」一松ーっ!?」
…この気まぐれで大きな猫が、私の体を抱き締めたまま一向に離してくれません…!
どういうこと?!ただでさえ昨日告白した後に問答無用で自宅(ここ)までついてこられて、即ベッドインからの朝までガン攻めという恐ろしくハードなスケジュール(予定にはなかった)をこなしたというのに、
目が覚めてからはや6時間、ずーっとこの状態…!ベッドから下りるどころか右にも左にも動けず、ただひたすら真正面から彼に抱き締められっぱなし!それが嫌ってわけじゃなくてむしろ愛されてるなー私♪とか最初は調子に乗ってたけどさすがにもうやばい!異常!でも力強く振りほどけない辛さ!まだこうしていたい気がしないでもないけどお腹も減ったし常識的にいつまでも裸で抱き合ってるのはおかしいしうわあああ!(パニック)
「…ん…お前、俺にこうされてんの嫌なの?逃げたい?」
「///そ、そうじゃないけど…」「だったらいいじゃん。はー、あったけぇ…」ぎゅうぅっ「〜っ!!///」
し、心臓が…!心臓が爆発する…!死んじゃう…!
というか猫耳出てるわよ、一松。半猫化するくらいリラックスしてるのかしら?…自分で言っちゃったけど、どういうメカニズムなのそれ?
あ、ピクってなった。猫耳可愛い…
いたずら心が湧いてきて、我慢できずに指で軽くつねってみる。彼は「に゙ゃッ!?」と猫っぽい悲鳴を上げて、いつも以上のジト目で私を睨んだ。
「……いきなり何すんの」
「あ、ご、ごめん。可愛くてつい…」
「…はァ?可愛い?…あんたさ、馬鹿なの?」
ギシ…と音を立て、彼が僅かに体を起こす。そしておもむろに私の耳にかぶりつき、尖り気味の鋭い歯をそこに食い込ませた。
「い、た…っ!」
一瞬意識が飛びそうなくらいの痛みが走り、目尻に涙が滲む。けれどそれは最初だけで、甘噛みになってからは徐々に痛みは快楽に変わっていった。