第35章 チョロ松とハッピーエンド
彼は私から目を逸らして、しばらく悩む仕草をした後…まるで降参とでも言うように力なく微笑んだ。
「……まいったな。あと数ヶ月は、君に隠しておくつもりだったんだけど…そんなに心配させてたって知ったら、教えるしかなくなるじゃないか」
「え…どういうこと?」
言葉の意味が分からずに首を傾げる。彼は苦笑した。
「はっきり言っちゃうとさ…君に渡す婚約指輪を買うために、いろいろと奮闘してたんだよね」
「…え…こんやく…婚約!?///」
「そう。…あーほら、こんな空気になるでしょ?プロポーズの時まで取っておきたかったんだけどなぁ…」
ちょ、ちょっと待って。婚約指輪?プロポーズ?!急な展開すぎてついていけない…!
「聞いてる?」
「は、はい!聞いてます!///」
「課長に無理言ってさ、僕の仕事を増やしてもらったんだよ。もちろん給料をよくするためにね。だから残業三昧ってわけ。夜は、指輪を買う店とかプロポーズする場所とかをネットで探してたんだ。休日だと君に悟られちゃうから。…僕なりにバレないよう結構工夫してたつもりなんだけど、まさか体調不良を見抜かれるなんて…自分が情けないよ」
「…チョロ松…」
理由が全部分かっても、しばらく放心状態だった。
つまり、チョロ松は私に指輪を買うために、日夜頑張って働いてくれてたってこと…?指輪=プロポーズ、ひいては将来的に、け、結婚…!///
そこでようやく、事の重大さに気付いた。と同時に、胸の奥から喜びや愛しさが込み上げてくる。
この気持ちをどうにか伝えたくて、私は勢いのまま彼に抱きついた。
「///ぅわっ!?な、なな、なに、どうしたの?」
「うぅ〜っ…すっごくベタだけど、泣きたいほどに嬉しいよぉ〜…っ!///」
Σ「ベタ!?」ガーンッ
…でも、やっぱり…
「チョロ松…あまり無理はしないで。せめて睡眠はちゃんと取ってほしいの。そのためなら私、なんでもするから」
カチ。「…あ」
言ってしまってから後悔する。す、スイッチが…!
「…ふーん?じゃあこれから毎晩、添い寝してくれる?その方が俺も安心して眠れるしね」
「!ぜ、善処します…///」
…まだまだ、彼の本性には敵わない…―
《Happy End》