第35章 チョロ松とハッピーエンド
最近、チョロ松の様子がおかしい。
晴れて恋人同士になり、一緒に暮らし始めて1年とちょっと。彼は正社員としてバリバリ働き、私はバイトを辞めて家事に専念している。
だから、働いている人よりは心にゆとりがある分、彼の僅かな変化にもすぐ気付いてしまう。
そう、例えば今朝。
時間には厳しい彼が、まさかの寝坊。といっても10分遅れくらいだけど、電車の時間にも関わってくるからわりと致命的だったりする。
朝食の時、なんとなく顔色を窺ってみたら、目の下にクマができていた。
それもそのはず、彼は最近夜中にこっそりと起きては、¨何か¨をしている。私自身は眠いので目までは開けられないけれど、聞こえてくる物音からするに、書き物?をしているみたい。
これがここ最近、一週間くらい前から毎日続いているのだ。感覚的に残業も増えた気がする。
つまり、仕事も忙しくなって、さらに家でも寝ずの何かをしていて…それだけならまだしも、このことをチョロ松に聞いても「なんでもない」の一点張りで、まともに話してくれないところが怪しい…。
ただでさえチョロ松にだけ働かせてるのが申し訳ないのに、相談すらしてくれないなんて。
バイトを辞めたのは、彼の意向によるもの。元々、仕事も家事も任せていたのが心苦しかったらしく、彼が働くようになり安定してからはいつでも辞めていいと言ってくれていた。
正直、二足のわらじがきつかった私は、迷いながらも結局お言葉に甘えさせてもらったのだけれど…結果的に彼が頑張りすぎてないか心配になったりもする。
せめてちゃんと休んでほしい。もう一度話を聞いてみようかな…
って、考え事してたら、もうすぐ17時じゃない!早く買い物行かないとタイムセールが!それよりもチョロ松も帰ってきちゃう!
見ていたようで見ていなかったテレビを消し、玄関に置いてあったカバンをひっつかむと、私は急いでスーパーへと向かった。