第33章 おそ松とハッピーエンド
台所で野菜を切りながら、同棲に至るまでの経緯をなんとなく思い返してみる。
といっても、同棲し始めてからまだ一週間しか経ってないけどね。
最初は私の暮らしてたアパートに来るって話だったんだけど、どうせなら完全新居がいい!とかおそ松が言い出して。
お金を貯めるために、ニートだった彼が就活し出したのは、それからすぐのことだった。
私は元々バイトをしてたから、シフトを増やしてもらったりして仕事を継続。苦労すると思われていた彼の就活は、意外にもあっさり成功。晴れて(というかようやく)社会人一年目、ただのニートからスーツを着たサラリーマンに昇格した。
節約もしつつ、ある程度稼げたところで、都心のわりと綺麗なマンションに移り住んだわけだけど…
幼少期の私たちからすれば、将来こんな暮らしをする日が来るなんて夢にも思わなかっただろうな。
おそ松を選んだのは自分自身だし、彼のことはもちろん好きだけど…まだまだ、二人きりの生活には慣れないわね…。
「はー、さっぱりしたー。お、作ってる作ってる」
切った野菜を鍋に投入していると、タオルを頭から被ったTシャツ姿の彼が台所に入ってきた。
「ごめんなさい、あと15分くらい待っててくれる?」
「俺なんか手伝おっか?」
「…おそ松、前それで大惨事になったの、忘れたわけじゃないわよね?」「じょーだんじょーだん、そんな怖い顔すんなよー」
ケラケラと愉快そうに笑いながら、彼は冷蔵庫を開けて缶ビールを取り出した。
「先飲んでてもいい?」「はぁ…どうぞご勝手に」「さんきゅ〜♪」
彼がリビングに戻っていき、私は料理を再開する。
…甘くなったなぁ、私。仕事で疲れてるだろうと思って、お酒もタバコも好きなだけ許しちゃってるけど、これってもしかしてダメになってく一方なのかしら?
まぁストレス抱えられても困るしね。バイトと正社員は違うんだし、何より生活のために働いてくれてるんだからこれくらいは…
「」ぎゅうっ
「ひゃっ!?」