第23章 愛より深く【おそ松】※
「う、うん。私、最後までよく覚えてなくて、ずっと気にかかっていたの。あなたが見つけてくれたのね」
「え、覚えてねぇの?すげー泣いてたじゃん」
「そ、そうだった?」
「俺の姿見た瞬間、泣きながら抱きついてきてさ〜。『おそ松くん、怖かったよぅ〜寂しかったよぅ〜』って」「…なんか捏造してない?」「してないしてない」
ふ、ふぅん…私にもそんな可愛らしい頃もあったのね。いや、そもそも置いてきぼりにしようとしたみんなが悪いんだけど。
「なんで、その…おそ松だけは探しに来てくれたの?確か鬼は違う人だったわよね」
好きだから放っておけなかった、なんて言われたらどうしよう。
ただでさえ見直しかけてるのに、これ以上彼の株が上がってしまったら…私…///
しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
「いやだってさー、探しに行かないと母さんに叱られると思ったんだよ。は無視しろって弟たちに命令したの俺だから責任重大じゃん?母さん怒ると平気で飯抜きとかひでぇことするから、それだけは避けときてぇなって。まぁつまり〜、仕方なくって感じ?」
…………ブチッ
ゴゴゴゴゴ「そこへなおりなさい、おそ松…私の淡い期待を踏みにじった罰として、今からあなたを熱湯風呂の刑に処すわ」「だからそれコントだよね?」
半ば本気だったのだけれど、熱湯を出すために蛇口を捻るよりも早く、彼が私の体を引き寄せ抱きしめた。
そして、耳元で囁く。
「…なーんて、嘘。さすがに心配になったから、引き返しただけ」「///!え…」
「確かに俺たち、けっこう酷い虐め方してきたけど、罪悪感が全くなかったわけじゃないよ?好きな女の子を本気で傷付けるような真似だけは避けてたつもりなんだけどなぁ」
「…おそ松…」
そうか…思い返せば、彼らに助けられたこともたくさんあったっけ。
悪い思い出ばかりが先行して、復讐心ばかり募っていって…彼らの優しいところが好きだったはずなのに、その優しさに触れた思い出を忘れかけてしまっていた。
…あの夢は、大切なことをもう一度思い出させようとしてくれたのかもしれない。
そして同時に、はっきりと自覚する。
彼らに抱く、れっきとした恋心を。