第21章 嵐は突然やってくる
誰かが階段を上ってくる音が聞こえる。
服を整えるのも間に合わない。それなら…!
「じゅっ、十四松!押し入れに隠れるわよ!」「!分かったっ」
定番中の定番とはいえ、最適な判断なはず。そう思い、私たちは咄嗟に押し入れの中に身を隠した。
部屋には私たちが¨していた¨という形跡はない。強いて言うなら、雰囲気というか空気というか…で、でも大丈夫!気付かれないって信じよう!
暗がりの中、分かる範囲で服を整えながら、息を潜める。
間もなくして、その¨誰か¨が部屋に入ってきた。
「…あれ、誰もいないや。おかしいな、居間にも人の気配なかったのに」
この声…チョロ松?
よ、よりによって何も知らない(はず)の彼が来るなんて、私ってどれだけ運がないのかしら…もしこんな形でバレたら、恥ずかしさのあまり自害しそうだわ…
「まぁいいか。えーっと、どこまで読んだっけ」
ソファーが軋む音と、紙をめくる音。え、もしやしばらくここに居座るおつもりで?いやいやいや困る、困るわ。
そりゃあ、彼らの自宅なんだし、ゆっくりしようが彼らの自由なわけだけど、今の状況的にかなりまずい。これじゃいつまで経っても逃げ出せないじゃない!
玄関に私の靴が置いてあったはずだけど、チョロ松は私がこの家に来ているのに気付いてないのかしら?音でしか判断できないからよく分からないわ。
「…、どーする?チョロ松兄さんね、多分雑誌読んでるよ」
小声で十四松が耳打ちしてくる。
「やっぱり?うーん、隠れちゃった以上、いきなり出ていくわけにもいかないし…」
「僕だけ出ていって、チョロ松兄さんを説得するとか?」
「押し入れに隠れてたこと、どう説明するの?」
「一人かくれんぼ!」「やめて十四松、寂しい子だと思われるから」
でも本当にどうしよう。こうなったら彼がトイレに立つのを待つしかない?確実ではあるけど、その間に他の兄弟が帰ってきたら余計出づらくなる上に帰りにくくなるわよね…やっぱりできるだけ迅速に
スパァンッ「たっだいま〜っ!ってあり?チョロ松だけ?」
ちょ…
長男降臨ッ!!!(白目)