第4章 松野おそ松という男
威嚇しまくりの私には全く動じない様子の彼が、やれやれと肩を竦める。
「会いたかったから会いに来ただけ?」
「はぁ?なんで疑問系!?」
「やー、だってさ。君もなんだかんだ、俺が来てくれて嬉しいっしょ?」
「なっ、そんなわけ…!」
「いい加減意固地になんのやめろよ〜。…本当は俺らのこと大好きなくせに」
「!!」
耳元で囁かれ、私は羞恥心のあまり彼を思い切り突き飛ばした。
ドンッ「あだッ!ちょ、さっきからバイオレンスすぎない?昔の気弱なちゃんどこ行ったよ」
「う、うう、うるさい!///」
「あー、図星じゃん。顔真っ赤♪」
「〜〜〜っ!!///」
…そう、おそ松くんの言う通り。
私は6つ子が大嫌いで、
同じくらい、大好きだった。
矛盾してるけどこれは事実。ほとんど虐められてたから仲良しとは言えないけど、それでも彼らはごくまれに、私に優しくしてくれた。
6人全員だったり、2人や3人…つまり、¨兄弟の誰か¨と一緒にいる時の彼らは悪逆極まりなかったけれど、
1人の時は決まって、私に優しくしてくれたんだ。
それがなぜなのか幼い私には理解できなかったし、彼らに対する恨みが消えるわけじゃない。
でも、優しい彼らのことは…大好きで仕方なかったのを覚えてる。
ただその感情まで見透かされてたとは思わなかったけどね!
「ご用が済んだのでしたらさっさと出ていっていただけませんか」ゴゴゴゴゴ
「わー、威圧がすごい」
これ以上恥ずかしい過去を思い出させてほしくない。やっぱりこいつは追い出す一択。
なのにおそ松くんはヘラヘラと笑ったまま、動こうとすらしない。
「なぁちゃん。俺たちさぁ、これでも反省してんだよね〜」
「…は?」
「君を虐めたことだよ。さすがにあれはやり過ぎたなって」