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【アイナナ/R18】Melody.【九条天】

第5章 4 Melody.〜天side〜




その日の夜。
ボクは自室でスマホと睨めっこをしながら、陸にかけようかかけないかで迷っていた。


今は会えなくていい。陸の側にいるならせめて声だけでも……。


今日海に行ったせいで、彼女への想いが制御しにくい。



(……出ないだろうね)



ボクと接触するのは、アイドルとして胸を張れるようになってから。

と、昨日の電話で陸が教えてくれた。


まだデビューさえしていないんだから、今の状態では絶対出てくれないだろう。

だったらかけても無駄だ。



(確かここに……)



その代わりにボクは本棚を漁る。
手にしたのはあまり大きくはないがちょっと分厚いアルバムだ。


開けば幼い頃の自分と陸……そしてが並んでボクに笑いかけてくれた。



(可愛い……)



何惚気てるんだと思うだろうが仕方がない。
だって本当なんだから。


この時でこんなに可愛いのなら、今は一体どれだけ可愛くなっただろう。


そう考えると身体が少し疼く。



「っ……」



ーー抱きしめたい。

この腕でを包んで、もう二度と遠くへは行かせないように力を込めて……いつまでも抱きしめていたいと思った。


好きで好きで……本当は狂いそうになる程好きで……
でも抑えつけなきゃならない現実に苦しんで……ボクはもうどうしたらいいのかわからない。



「、好きだよ……」



だから1人でいる時にこうして声に出して、溜まりに溜まった想いを吐き出す。


……けどそれは逆効果。
益々胸の辺りが痛んでしまう。


言えばどうなるかそんなのとっくに知ってるのに……それでも口にしてしまうボクはバカだ。



「っ……」



キツく嚙み締める唇からは、今にも赤いしずくが落ちそう……。



◆4 Melody.END◆
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