第5章 4 Melody.〜天side〜
その日の夜。
ボクは自室でスマホと睨めっこをしながら、陸にかけようかかけないかで迷っていた。
今は会えなくていい。陸の側にいるならせめて声だけでも……。
今日海に行ったせいで、彼女への想いが制御しにくい。
(……出ないだろうね)
ボクと接触するのは、アイドルとして胸を張れるようになってから。
と、昨日の電話で陸が教えてくれた。
まだデビューさえしていないんだから、今の状態では絶対出てくれないだろう。
だったらかけても無駄だ。
(確かここに……)
その代わりにボクは本棚を漁る。
手にしたのはあまり大きくはないがちょっと分厚いアルバムだ。
開けば幼い頃の自分と陸……そしてが並んでボクに笑いかけてくれた。
(可愛い……)
何惚気てるんだと思うだろうが仕方がない。
だって本当なんだから。
この時でこんなに可愛いのなら、今は一体どれだけ可愛くなっただろう。
そう考えると身体が少し疼く。
「っ……」
ーー抱きしめたい。
この腕でを包んで、もう二度と遠くへは行かせないように力を込めて……いつまでも抱きしめていたいと思った。
好きで好きで……本当は狂いそうになる程好きで……
でも抑えつけなきゃならない現実に苦しんで……ボクはもうどうしたらいいのかわからない。
「、好きだよ……」
だから1人でいる時にこうして声に出して、溜まりに溜まった想いを吐き出す。
……けどそれは逆効果。
益々胸の辺りが痛んでしまう。
言えばどうなるかそんなのとっくに知ってるのに……それでも口にしてしまうボクはバカだ。
「っ……」
キツく嚙み締める唇からは、今にも赤いしずくが落ちそう……。
◆4 Melody.END◆