第5章 4 Melody.〜天side〜
〝ごめん……。こればかりはオレの口からは言えないんだ……〟
電話を切った後も、陸が言ったこの言葉が頭の中をグルグルと回り続ける。
何を隠してるの。
どうして言えないの。
あんな手を使ってまで彼女の存在を教えてきたくせに……今更秘密にする必要が何処にあるの。
(……けどあれしか考えられない)
自分の中で思い当たるのは会えなくなった理由。
もしそれなら、確かに陸の口から言うのは間違ってるなと思う。
……しかし怖いというのがどうしても結びつかない。
あの日、ボクは特に怒って怖がらせたりなんかしてないから。
寧ろ「待ってる」って、が来るのを楽しみにしてたくらいだ。
(考えたって仕方ない。知りたいなら直接本人に……)
本人に聞くーー。
今はまだ会えないとは言っているらしいが、声くらいなら大丈夫だろう。
しかしボクはの連絡先を知らない。
昔の番号はもう繋がらないし。
(……いや、やっぱり電話じゃダメ)
ボクにとって会えなくなった理由というのはとても大事な話。
好きな子がいきなり顔を合わせなくなった。
いきなり居なくなってしまった。
これ……当時の自分にはかなりこたえた。
「……」
いや、それは今でも続いている。ボクの心にはまだがいるから。
彼女の名前を口にするだけで胸が苦しくなるくらい想ってる。
いっそちゃんと突き放してから消えてくれれば、こんなに痛い思いをしなくて済んだかもしれないのに。
姿を消しても尚ボクを掴んで離さないなんて……はズルすぎる。