第4章 3 Melody.
と、なんの躊躇いもなく大和さんに告げた。
昨日の事は本当に嬉しかったから。
なのに大和さんは「サンキュー」とだけ言って部屋から出て行ってしまう。
出会って2日目じゃ気持ちは伝わらないのかな……。
(逆に怒らせちゃったのかも……俺の事まだなんも知らないのにって……)
大和さんだけじゃなくて、陸以外の人の事も私は知らない。
……いや、陸も同じだ。この6年間の彼は知らないから。
でもさっきは素直に思った事を言っただけ。
いくら考えても悪い発言は見当たらない。
(今度会ったら謝っておこうかな……)
「よし……!歌詞を覚えなきゃ……!」
なんかモヤモヤしてしまったが気を取り直さなければ。
デビューに向けてこのラブリーな歌詞を頭に叩き込まないと。
もう天を考えないように真剣に向き合おう。
「参ったなーこりゃ……」
一方レッスン室の外で、大和は口を手で隠していた。
優しいとかかっこいいとか……そういうのに慣れてない彼にとって、さっきのの発言はかなり恥ずかしかったようだ。
言われて悪い気はしない。ただ照れる。
赤い顔なんか見られたくないからこうして逃げてきたのだが……まだ火照りは抜けない様子。
(全く……とんだ後輩だよ、お前は)
背中にあるドアに視線を向けて心で言う大和。
惚れてしまったかのように見えるが、特に恋愛感情は芽生えていないようだ。
はあくまで可愛い後輩。
女として好きなわけじゃない子に言われても嬉しいもんなんだなと、彼はフッと笑みをこぼした。
「大和さん、そんな所で何やってんだ?」
「っ……よーミツ!言っとくけど、今俺の顔をジロジロ見るの禁止なー」
「なんで?なんか隠してんのか?」
「おい……!だから禁止だって……!」
「……!!おっさんが顔を赤くしている……」
「っ……あーもう……」
◆3 Melody.END◆