第38章 37 Melody.
跳び蹴りのごとく参上した三月さんのおかげで、私はダイブしなくて済んだ。
済んだけど……ここから三月さんの大説教が始まる。
お前は何回言えばわかるんだよ!!
大体夜に大きな声を出すな!!
とご近所さんに謝れ!!
そう言う彼の声また……結構なボリュームだが。
「これじゃ益々近所迷惑になるって、兄さんは気付いていませんね」
「あ、一織くん」
「さん、あなたは中に入ってください」
「わ、わかった」
(いいのかな、放っておいて……)
「七瀬さんは彼女を支えて」
「うん!姉こっち!」
「あ、ありがとう」
元はと言えば私の怪我が原因でこんな事になった。
三月さんの迫力に押されて小さくなってるナギさんが、少し可哀想に見える。
退散する事に後ろめたさを感じるけど……一織くんの「モタモタしないで」オーラが凄いので、ここは仕方なく移動します。
「ナギのやつ大丈夫かー?ミツもかなりキレてんなー」
「俺、うるせぇ!って、言ってくる」
「た、環くん!ダメだよ行っちゃ……!」
「じゃあ、そーちゃんはいいのか?このまま騒いで、近所のヤ––––」
「待てタマ。今言おうとした事、お兄さんにだけ分かるように小声で説明しなさい」
「何って、ヤクザ……だけど」
「き、聞こえてしまった……この近所にそんな人達がいたなんて……」
「何言ってんだソウ、居ない居ない」
「なあ環、何の話してるの?そんな人達ってどんな人?」
「りっくん知らねぇの?なんか、落とし前つけろ!!とか言って、指とか耳とか––––」
「はいはいそこまで。タマ、それ以上は言うな」
「なんで」
「リクの純粋な笑顔が恐怖で引きつっちまう」
「オレ知りたいです!指とか耳とかどうするんですか?!」
「お前は知らなくていい」
「でも切り落とされる前に切り落とさないと殺られてしまうね……ここは護身用に武器を調達して……例えば巨大なチェーンソーとか……」
「そーちゃん!真面目な顔して、変な事言うんじゃねぇよ!」
「おーい、誰か縄とガムテープー。ソウを止めろー」