第36章 35 Melody.
(ここで手を上げてっ……身体をくねらせながらっ……!)
「姉!」
「ハァ……っ、陸……?」
「練習中にごめん。後どれくらいかかるの?」
「え……?んーと……」
(特に決めてなかったな……)
「そろそろ始まるよ!TRIGGERのチケット!」
「あっ!」
暫くたったある日。
今日は歌じゃなくてダンスの方を重点的に練習していた私は、集中しすぎてチケットの事をすっかり忘れていた。
競争率が高いはずだから、開始10分前にはスタンバイしていようとみんなで話し合っていたのに……レッスン室の時計の針は開始3分前をさしている。
……やばい。
「ちょっ!陸急ぐよ!」
「ま、待ってよ姉!」
「あー!!ダメダメ!やっぱ陸は走っちゃダメ!ゆっくり落ち着いて歩いて来て!」
「少しくらい大丈夫だよ!ほら!姉早く!」
「あっ、こら!発作になったらどうするの!止まりなさい!」
「もしそうなったら姉に看病してもらうからー!」
「なっ……!そうなっちゃ困るの!」
事務所の廊下を走る私と陸。
一応これは私用目的だから、本当は使っちゃいけないんだけど……
今日は特別に社長さんと万里さんの許可を得て、事務室にあるパソコンをお借りする事になっている。
だから私達が向かう先は事務室。
勢いよく扉を開けると、万里さんが「開いておいたよ!」って……笑顔で画面を見せてくれた。
「2人共ギリギリだったね。後1分もないよ」
「本当だ……!ほら姉!走って正解!」
「そ、そうだね……」
(練習後の全力疾走は疲れる……)
「あっ!陸くん、さん、始まりましたよ!」
「よーし!いくよ、姉!」
「う、うん!」
(絶対手に入れてみせる……!)