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【アイナナ/R18】Melody.【九条天】

第34章 33 Melody.〜天side〜




「っ……天っ……」

(……しまった泣かせた)
「外でその呼び名はやめてって何度言––––」

「ありがとうっ……」



と言って……が思いきり抱きついてきた。
反動で宙に浮いたボクの両腕は行き場を無くし、その場で固まる。


人目や立場、九条さんの夢を優先して彼女を押し返すか……
嬉し涙を流す愛しい彼女の身体に腕を回すか……


〝さぁ、お前はどっちを選ぶ?〟


また……あの壁の声がする。
ボクを試すように選択肢を投げつけてくる。



(っ……)



正直2つを天秤にかけるなんて出来ない。
どちらも自分にとっては大切なもの。

だからずっと……1人で苦しんでたんだ。

やっとと再会できて、想いを通わせて……何もかも一つに重ね合わせたのに、プロとしての自分が冷静に呼びかけてきた事で、ボクは彼女と距離を置いてしまった。

それが辛くて……毎晩のように拳を握ってた。



(ボクは……)



……だったら両方守ればいい。
が側にいるいないでは、苦しいにも意味が違う。

だからTRIGGERの九条天も、を想う九条天も……両方守ればいいんだ。


……けどボクに出来るだろうか。
この先、上手くやっていけるだろうか。



(……ボクを誰だと思ってるの)



答えは直ぐに出る。
このボクが上手くやれないなんて事はありえない。

ファンも九条さんも楽も龍もも……ボクなら大切に出来る。


でも……



「……こんな所で抱きつかないで」

「あ……ご、ごめんなさいっ……」



ここでは腕を回せない。
キミの温もりを感じられない。

どうしてなのかは、ならわかってくれるでしょう?


だから来て。
ボクと一緒に来て。



「……行くよ」

「えっ……ど、どこに……?」

「……わかるでしょう」

「っ……」



放置した分––––



「……ボクの家」



キミを愛させて……。




◆33 Melody.END◆

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