第33章 32 Melody.
彼……今までで1番冷たい目をしていた。
嫌な焦りを感じるくらいの……冷酷な目。
仕事に関してはかなり厳しいって知ってるし、指摘があるならどんどん言ってほしかったのに……天は何も口にしないまま去っていってしまった。
(どうしたんだろう……)
「りん、おかえり」
「あ……う、うん!ただいま!」
「おかえりちゃん。夕食はどうする?キミの分ちゃんと用意してあるよ。……あっ、でももしかしたら済ませて来たかもしれない……だとしたらかえって迷惑になるんじゃ……」
「なあ。そーちゃんは、なんでいつもそうやって、どんどん悪い方にばっか考えるんだよ」
「えっ……いやそんなつもりは……」
「飯、食えば?でいいじゃん」
「そんな……!それじゃ素っ気無さすぎだよ……!」
お腹はすいてる。
でも食べる気にはなれなくて……私は断った。
そしたら壮五さんが凄く心配してしまって、寮内が騒がしくなる。
「姉どうしたの?!具合悪いの?!」
「う、ううん。そうじゃなくて……」
「ワタシわかりました。ダイエットでーす!」
「私が見たところでは、彼女にはダイエットなんて必要ありませんけど」
「もしかして恋の病ってやつか?!今日あいつと一緒だったんだろ?」
「いーや、九条の奴に説教でもされたんじゃねーか?」
「もしかしたら、僕が勝手に入れたタバスコのせいかもしれない……」
「あんたバカか!!そーちゃんがそんなもん入れたら、死ぬって言ってんだろ!!」
「し、死なないよ!僕はただ、ちょっとピリッときた方が美味しいと思って……!」
「あー!!オレと一織で作ったパスタがぁぁぁぁ!!」
「……真っ赤ですね」
「ほら見ろ!これのどこが、ちょっとピリッなんだよ!こんなもん、俺でも食えねぇし!」
「ちょ、ちょっとピリッは食べてみなくちゃわからないだろう……?!」
「食わなくても、わかるっつーの!!」
「あ、あのっ……」
(なんか大変な事になってきた……っ)