第2章 1 Melody.
「今日からよろしくね、くん」
「はっ、はい……!」
19歳。
数日前に小鳥遊事務所の社長さんからスカウトを受け、今日正式に契約を結んだ。
本当は不安しかない。
自分にやり遂げられる自信がない。
それでも社長さんの話を受けて、私はこの世界に足を踏み入れた。
ある人ともう一度会いたくて。
「じゃあ行こうか」
「えっ……ど、どこにですか……?」
「レッスン室。みんな待ってるよ」
そのある人とは私の1個下の幼馴染で、名前は九条天。
今はTRIGGERのセンターとして日々活躍している。
昔から彼の事が好きで……それは19になった今でも変わらない。
(って事は……)
「ん?どうかした?……ああ、やっぱり怖いかな?」
「あ……い、いえ……」
「大丈夫だよ。ウチの子達はみんな良い子だから」
「は、はい……」
彼には双子の弟がいる。
名前は七瀬陸といって……この事務所の看板アイドル、IDOLiSH7のセンターだ。
TRIGGERのセンターである九条天と幼馴染なら、当然陸とも幼馴染。
本当は会える事に喜びを感じる所だけど……私は複雑だった。
「着いたよ。開けるけど大丈夫?」
「はい……っ」
彼らから逃げた過去を持つ私。
更にはとある弱さを抱えている私。
こんな状態で顔を合わせるのは正直恐怖でしかない。
けど……
「あれっ……姉……?」
「陸……」
「ははっ……!姉!!」
笑顔で駆け寄ってくる陸がなんだか可愛くて……私はつい顔を緩めた。