第29章 28 Melody.〜L〜
(……狭い)
「力抜いてって言ったでしょう」
「うっ……うんっ……!」
「このまま暫くやるよ、いい……?」
「う、んっ……!」
ボクの指は男の割りに細い方だと思う。
それを1本しか使ってないのに、狭いせいでなかなか動かせない。
力加減には気をつけないといけないけど、この過程はとても大事だから……の為にも優しくゆっくり緊張を解いてあげなくちゃね。
「んぅっ……!」
(……また力入れてる)
「ねぇ……ボクのどこが好き?」
「えぇっ……?」
(気を紛らわしてあげる)
「教えて……」
いくら力を抜けと言っても、身体は直ぐに言う事を聞かなくなる。
辛そうに顔を歪める姿は出来れば見たくない。
初めてじゃ仕方のない事だってわかってるけど……。
「そんなっ……いきなり聞かれてもっ……」
「ただなんとなくじゃないでしょう?」
「あっ……当たり前だよっ……!」
「じゃあ何……?」
「っ……優しいとこっ……」
「次……」
「可愛いけどかっこいいとこっ……」
(……可愛い?)
「次……」
「っ……もうっ……全部だよ……っ」
〝私は天の全てが好きだよっ……〟
〝笑うとこも怒るとこも……ちょっと慌てるとこもふて腐れるとこも……
頭の回転が速いとこもマメなとこも……器用なとこも弟思いなとこも全部〟
〝そんなあなたを見ているうちに私は惹かれていったんだ〟
〝……今じゃこんなに想いが膨れ上がってる〟
〝抑えきれないくらい膨れ上がってる〟
〝ねぇ天……好きにさせてくれてありがとう〟
〝私の事、好きになってくれてありがとう〟
〝天といられたら私……この先ずっと幸せだよ〟
と……は恥じらいもなく言いきった。
ボクから目を離さずはっきりと。
自分で聞き出したくせに……聞いたら聞いたで照れくさくなってたまらない。
(っ……嬉しい……)