第23章 22 Melody.〜天side〜
「残念だったな、キス出来なくて」
「……うるさい黙って」
帰り道。
楽と龍に挟まれて歩くボクは絶賛いじられ中。
普段だと出来ないからか、これでもかってくらいに言ってきて苛立ちがおさまらない。
「で、でも凄いよ天は」
「急になんなの」
「いや……女の子とキスなんて俺には無理だからさ……」
(……だからしてない)
情けない発言をかます龍。
でも彼はこういう人だ。
優しすぎるから断れなくて、いつもいつも女に引っかかってばかりいる。
実際は女慣れしてないのに。
「お前は断り方を覚えろよ」
「断り方か……でも女の人相手だとどうも……」
「そこを上手くかわせよ。なんなら教えてやろうか」
「えっ……!」
「いいんじゃない?龍には少し教えといた方がいい」
「だよな」
「じゃあ楽、キミが女役」
「は?!」
「龍を口説いてみて。得意でしょう」
「得意ってなんだよ!」
「ボクにはそう見えるけど」と言うと、楽は「マジな奴にしかしねぇよ!」と声を荒げた。
素直に思った事を口に出来る楽の性格は時々尊敬する。
ボクは……あまり言わないから。
(いや、最近は言ってる……かな)
◆22 Melody.END◆