第22章 21 Melody.
「っ……」
(何それ反則だよっ……)
ついさっきまで不貞腐れたような顔をしていた天。
なのに急にフワッと微笑んだものだから……私の胸はドキドキ。
いきなり笑うなんてずるいっ……。
可愛いとか思っちゃうじゃん……っ。
元々綺麗な顔立ちだからか、天が笑うと破壊力が半端ない。
「何下向いてるの」
(見れないからですっ……)
「いや……ええっと……」
「……見せて」
「っ……!!」
スッ……と伸びてきた天の手は、迷う事なく私の顎を取り……そして上に向かせた。
咄嗟に警戒してしまう身体は、もう自分でも嫌になる。
けど私は真っ直ぐ見つめた。
嫌だって叫び出しそうな心と、小刻みに震える身体を必死に抑えながら。
「……そんな顔しないで」
「どう……してっ……?」
「……抑えられなくなるでしょう」
と言って、天は顎に添えられていた手を……今度は頬に滑らせた。
彼の優しい手つきと熱い眼差し。
いまだに身体は震えているはずなのに、私の心身は違う意味の緊張で覆われていく。
(天っ……)
胸から飛び出してきそうなくらい激しく動く心臓。
息だって凄くしにくい。
そんな私を知ってか知らずか……天は少しずつこっちに近づいてくる。
薄目になった彼の目が……
微かに開かれた彼の唇が……
そして彼の整った顔が……
もう直ぐそこ……。
◆21 Melody.END◆