第16章 15 Melody.
(失望させないで……か……)
まだ言いたい事があったように見えたけど、リハがTRIGGERさんの番になってしまったから……天は今ステージの上。
彼らの完璧なパフォーマンスを見ながら、私はさっき言われた事を思い返す。
(……痛い)
彼が言っていたことは正しい。
確かにリハの時、私は気を緩めていたから。
それは自分でも認めて、だから頭を下げて……本番ではしっかりしなきゃって前向きに考えたのに……
天が言った言葉の数々が……胸に刺さったまま抜けない。
「流石TRIGGERですね……おれまで魅入ってしまう」
「そう……ですね……」
「ん?どうしたんですか?さん」
「あ……いえ、なんでもないです」
棘なんて、そんな小さなものじゃない。
まるで鋭い刃物で何回も刺されたかような痛みが、身体の中心部から感じる。
プロとしての意見を受け止める力がない、まだまだ青い新人なんだって……改めて思い知らされる痛みだ。
(何やってるんだろう……)
ファンのみんなを楽しませる事が私達の役目。それはわかってる。
折角この暑い中来てくれるんだから、最高のひと時をプレゼントしたい。
だから私はファンの為に全力を尽くす。
どう考えても、今の自分に出来る事はそれしかない。
今一度考え直させてくれた天と、期待してくれてるファンに……精一杯の感謝をこめてやり切ろう。
(失望なんかさせない。あなたにも最高の時間をプレゼントしてあげる。だから……みてて、天)
◆15 Melody.END◆