第10章 9 Melody.
番組はずっと和気藹々に進んでいった。
まあほぼ百さんと千さんのコントみたいな感じだったけど。
でも2人が本当に楽しそうにしてたから、私も自然と笑顔でカメラの前にいることが出来た。
「ねぇねぇ!セッティング出来たって!」
「じゃあちゃん、よろしく」
「はい……!」
(いよいよだっ……)
そしてこれからデビュー曲を披露する。
局入りした時よりは緊張が少ないから良い感じでパフォーマンス出来そう。
今まで沢山練習したんだ……きっと上手くいく。
(自分を信じよう……)
「……あ」
初めはこの曲が可愛すぎるからって恥ずかしさを感じた。
私には歌えそうにないと思った。
でも今は大好き。
数えきれないくらいの練習を重ねているうちに、曲に対して愛を抱くようになったんだ。
これが私の曲だ!って……胸張って歌える。
そんな気持ちを大切にしながら歌えば、きっとみてくれる人達にも私の思いが伝わるはず。
だから堂々とやれ。
精一杯やり遂げろ。
そう心で自分に言いながら位置についた。
だけど私の視線はある一角を捉えたまま動かない。
(どうして……)
もう直ぐイントロが始まるのに、私は出だしのポーズすらとっていなかった。
ただただソコに目を向けて……頭の中を疑問で埋め尽くす。
(どうしているの……天っ……)
◆9 Melody.END◆