第10章 9 Melody.
「少しでもあなたの力になればと持ってきました」
「ありがとうございます……っ」
「……それは嬉し涙です?」
「はいっ……」
「悲しい涙……怒りの涙……涙一つにも沢山の意味あります。ですが、中でも嬉し涙は……とても美しい」
ナギさんの事だからちゃっかり涙を拭ってきたりするのかなと思ってた。
けど彼は手を出さない。
本物の王子様のような笑みを浮かべている。
そんなナギさんの温かさと、さっきの嬉しいコメントのおかげで……私の中にやる気がどんどん湧いてきた。
早く収録に挑みたい!と思う程に。
「明日頑張ります……!本当にありがとうございます、ナギさん」
「いいですよ」
「へへっ……」
「では、トークチェンジ。話変えましょう」
「はい、なんですか……?」
「今からワタシと、ここーな観ましょう!!」
「……へ?!」
(まじこな?!)
キラキラした目でまじこなのDVDを掲げ、キラキラした目で私を見てくるナギさん。
「このディスク!オススメです!!」とか言ってさっさとデッキに入れている。
しかもどこから出してきたのか、ナギさんの傍らにはまじこなのフィギュアが。
……嫌な予感しかしない。
(でもまあ……1話くらいなら大丈夫かな……)