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夜明け

第5章 雨催い



 トラウマと戦いながら己の罪を吐露する。曰く、己のせいで骨喰は傷つき、一期は折れたのだと。泣きじゃくりながら告げる前田に、俺はかける言葉を見つけられないでいた。

 この本丸の重大なことは、大きく分けて二つある。
 一つが一代目の犯した罪。そして、一代目の行方。二つめが、二代目に代わってからの本丸の記録。そして、こちらもまた、二代目の行方。
 前田が語ったのは、二代目のことである。そのことから分かったのは、二代目が嫉妬に狂ったということ。色欲に狂ってしまったということ。
 鶴丸が以前口にしていた、「二代目も最初は優しかった」という言葉からも、少しずつではあるが、二代目について分かり始めてきた。

 頭の隅で情報を整理する。目の前の前田は、その小さな体を震わせ声をあげて泣いている。泣けばいいと思う。きっと、今まで泣けなかったのだろう。慰める言葉をもたない俺は、ただ、その姿を見つめていた。隣では困ったように、こんのすけが尻尾を下げている。

 前田が落ち着くのを待っていれば、手入れ部屋の襖が突然開き、殺気立った気配に何事かと振り向く。その場に立っていたのは、出陣から帰ってきたばかりの鶴丸だった。

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