第5章 雨催い
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とうとう、手入れを受けていない刀は、今剣、光忠、前田の残り三振りとなった。そんな中前田から手入れを受け入れたいとの申し出があった。
前田の姿は、遠くから見たことはある。だが、言葉を交わすのはこの日が初めてだった。いつもは立ち会う歌仙も三日月も、今日は出陣や当番にあたっておりいない。ある程度の信用は得られたのか、俺一人で手入れをしてもよいとのことだった。
前田が待ってくれているという手入れ部屋へ向かう。こんのすけは尻尾を振りどこか上機嫌だ。
「ご機嫌だね?」
腕の中にいるこんのすけに問えば、こんのすけは耳を立たせて嬉しそうに答えた。
「ええ、それはもちろん!なんたって審神者様、とうとう残すは二振りですよ!」
残り二振り、というのは手入れを受けていない刀剣の数だ。穢れもある程度はなくなり、確かに過ごしやすい空気となった。こんのすけが喜ぶのも分かる。
ただ、手放しで喜ぶには、いささか気になることや解決できていないことが多すぎる。立て直した、というにはまだ早いだろう。