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夜明け

第4章 玉蜻



 数時間かけ、何とか刀の手入れを終えた。ただ、今までと違って加州本人が目を覚ます気配はなかった。
 手入れは成功。磨かれた刃は、鏡のように見る者の顔を映す。ならば、なぜ目覚めないのか。

「…ありがとう」

 大和守が加州の本体を見つめながら、つぶやく。その瞳には、情があふれている。加州は、大和守にとってかけがえのない存在なのだと聞かずとも分かる。

「目が覚めないのは、他に異常があるのか?」

 思い切って尋ねれば、歌仙も大和守も首を横に振る。

「他の二振りと同様、君の手入れは完璧だよ。……ただ、加州の場合は、」

 歌仙が言いよどむ。表情からして、よい話ではないことは明らかだ。大して大和守の表情はどこか安堵に包まれていた。

「気にしなくていいよ。こいつ、寝坊助なんだ。…ゆっくり待つよ」

 傷だらけの相方を見るのは、辛かったのだろう。

「大丈夫、きっと」


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