第2章 幽冥
「案内ありがとう。助かった」
「構わないさ。また何か困ったことがあったら、言ってくれ」
青江の言葉にこくりと頷く。
青江も、この本丸にいる刀の中では随分親しげに接してくれる刀の一振りだった。俺がこの本丸でやっていけているのは、勿論俺自身のことも含まれるだろうが、数振の刀がわりかし協力的だからだ。
「青江は、なんで協力してくれるんだ?」
疑問に思ったことを聞けば、青江は少しばかり考えた。
「協力…してるつもりはないんだけどねぇ」
呟いてから、俺へと一歩ずつ近づく。基本的にこの本丸の刀は、俺にというか人間に近づくのを避ける。だが、この青江と鶯丸は別だった。触れられる距離まで詰めると、妖しくて艶っぽい笑みを浮かべる。
「知りたいなら、きみのことも教えてくれないと」
ゆっくり右手で頬を撫でられ、思わず硬直する。決していやらしい意味なんかではないと分かっているのに、青江の纏う雰囲気が色っぽくて反射的に顔が熱くなる。
「いや…、いいです……」
「ふふ、残念」
青江は少しも残念そうじゃない様子で、すっと俺から離れた。そのまま去っていく後ろ姿を見ていると、また頭の中で色々言われるが適当に流しておく。
問題は目の前に広がる荒れに荒れた畑である。
畑仕事など、小学生の頃以来だ。それでもやらないことには何も始まらないし、まぁ何とかなるだろう。とりあえず雑草をむしっていく。
しかしやってもやっても終わりが見えない。なんせ広いので。見ないようにしていたが、奥には田んぼらしきものもある。これどうしろと?
陽が傾き出したが、終わったこといえば雑草抜きが三分の一といったところだ。1日では到底無理そうなので、今日はここまでで終わることにする。
腰が痛いのなんの。へとへとになりながら、審神者部屋へと戻った。
相変わらず空気は重いままだ。こればっかりは清掃だけでどうにかなるもんでもない。さて、どうするか。