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夜明け

第1章 暁闇


1

「こちらが、今日から審神者さまが引き継ぎになる本丸になります」

 そう言ってドヤ顔で胸を張ってしゃべる狐に、俺はツッコミも忘れてあんぐりと阿保みたいに口を開けた。

 政府からの懇願によりやって来た俺は、来て早々後悔する。

 目の前にあるのは禍々しい雰囲気を放つ日本家屋に、枯れた木々、花どころか雑草すら生えているか危うい痩せた土地は、所々ひび割れている。空は雲に覆われ最早今が昼なのか夜なのかも分からない。その上、時々光る空に数秒遅れてやってくる空を引き裂くような地響きは、これでもかと言う程不気味だ。

 話しには聞いていたが、まさかここまで酷いとは。
 俺はため息をひとつおとし、空を仰ぎ見た。

「まじかぁ…」

 思わず漏れた言葉も仕方がない。まるでこの世の終わりを体現したような風景は、神々の怒りや憎悪、妬みに嫉みといった、要は負の感情が行き場をなくしたが故の結果だった。これをどうにかしろというのだから、骨も折れるというもの。

 もう一度ため息を吐く俺の横で、こほん。まるで人間のような咳払いを一つして、狐は幾らかトーンを落としてから、改めましてと続けた。

「ナビゲーターのこんのすけです。大抵のことは頭に入っております故、困ったことがあればなんでも聞いて下さいね!こんのすけに答えられないことでも、言ってくださればすぐに政府のものに繋げます。ちなみに、審神者さまの担当はまだ着任しておりませんが、安心して下さい。少々遅れているだけなので、すぐにつくかと!」
「……それ、本当に安心していいやつ?」
「もちろんです!」

 えっへん。胸を張るこんのすけに、不安しかない。

「では、まずは離れにご案内いたします。離れには、生活に必要な物が一式揃っております」
「それは便利だな。助かる」
「と言っても、全て簡易的なものですが。本邸に行けば大浴場や釜戸もあります。しかし、なんせ暫く使っておりません故。まぁ、刀剣男士の皆様が使わさせてくれるか、というのが一番なんですけどね」


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