第3章 【苦】―こみかるらいふ―
―また、あの夢だ―
黒と紺が渦巻いた世界
得体の知れない何かに追われ、逃げるもうまく走れない
一体誰に追われているのかはわからないけど、
悪意や敵意の類を持たれていることはわかる
目の先に見える建物に逃げ込み、走った先にいくつかあった扉の一つに滑り込み、そっと閉める
ここまではいつもと同じだ。
きっとこの後も、いつも通りに追ってきた「誰か」がここへやって来るはずだ
それに気取られぬように息をひそめてやりすごしているうちに夢が終わるはず
はず・・・
なのに、覚めない
おかしい
気配がどんどん近づいてくる
ああ、もう隠れたドア一枚向こう側に「誰か」の気配
ついにドアノブが向こうから回される
このまま夢が覚めなかったらどうなるんだろう
音を立ててゆっくり開く扉
その向こうから押し寄せる負の感情の塊
瞬間、目の前に強い光が現れた
金色の光に眩んで何も見えない。
その光が、すべてを打ち消すようにさらに強く光る
一瞬だけ逆三角のような形が見える