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短編集【庭球】

第74章 Flavor of love〔亜久津仁〕



「え、じゃあもう一回やる!」
「なんだそれ」


いそいそともう一度タオルの中に戻った私を、仁が笑う。
タオルはしっとりと湿っているし、顔はすっぴんだし、髪だってまだ濡れたままで、ロマンチックのかけらも見つけられないシチュエーションだけれど。
でも、この胸の高鳴りは嘘じゃないし、こんなにも愛おしい。

ちょっと乱暴に、片手でばさりとバスタオルをめくった仁にねだったキスは、煙草の味がした。


fin



◎あとがき

お読みいただき、ありがとうございました。
久しぶりの亜久津、いかがでしたか。
今回はプロポーズとまではいかないお話でしたが、亜久津はこういう日常の延長のようなシチュエーションでプロポーズしそうだなあと思います。
亜久津の他だと、宍戸さんとか大曲パイセンとかもそんなイメージです。
このお話の亜久津は大学生ですが、FXとか株とかでそこそこの収入があって、わりと家賃のお高い都心オフィス街そばのマンションに住んでいる想定です。
夢主がドレスにはしゃいでいるシーンで亜久津が不機嫌なのは、夢主が自分を放って勝手に走り出したから、だとかわいいなと思いながら書きました。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
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