第73章 エンドロールをぶっとばせII〔ジャッカル桑原〕*
男に所有印をねだったのなんて、学生の頃以来じゃないだろうか。
それを昨夜に限って口に出していたのかと思うと、酔っていたとはいえ、自分の行動の稚拙さに呆れてしまう。
覚えていなくてよかった、と思った。
今でさえ顔から火が出そうなのに、変に少しでも記憶があったら、視線を合わせることもできなくなっていたかもしれない。
「大胆…か、言われりゃそうかもな」
「そうだよ! 恥ずかしくて死にそう…」
「けど、すげえかわいかったぜ」
ジャッカルは柔らかく笑いながら、私の首筋をそっと撫でて言った。
その手はそのまま、胸元の乱れたバスローブの左肩だけを剥く。
あらわになった肩口に唇を寄せたジャッカルは、少し声を潜めて「なあ、もう一個つけていいか?」と問いかけてきた。
拒否するという選択肢がとっさに思い浮かばなかったあたり、私は本当にこの男のことが好きらしい。
ちり、という痛みと共に新たに咲いた紅い花。
それを満足そうに舐める舌に、くらりとした。
「……つーか、下着つけてないのか」
──うわ、忘れてた。
起き抜け、部屋のどこかに散らばっているであろう下着を探して回収する余裕は、時間的にも精神的にもなかった。
バスタオル一枚でバスルームに駆け込んでしまったせいで、素肌にそのままバスローブを羽織る羽目になったのだ。
ジャッカルは肩紐の有無でノーブラだと判断したのだろうけれど、正確にはショーツも履いていない。
どうしよう、恥ずかしい、そう思えば思うほど蜜が溢れてきてしまうのを自覚しながら「え、あー…うん…」なんて微妙な肯定を返す。
乱れたバスローブの合わせから、骨張った手がするりと入り込んできた。
「んっ…」
指先が胸の頂をかすめて、その刺激に呼気が鼻へ抜けた。
それを見逃さなかったジャッカルは、ぴんと存在を主張する先端を人差し指で転がしながら胸をゆっくりと揉みしだいて、下半身の昂りを誇示するように押しつけてくる。
服の上からでもわかる、自分だけに向けられた熱量の大きさと重さに、私はこれからこの男に抱かれるのだと本能的に確信して、思わず息を飲んだ。