第72章 エンドロールをぶっとばせI〔ジャッカル桑原〕
「うん、酔って本音が出ちゃったってやつ、だと思う」
「もしよければ…手遅れじゃないならもう一回言わせて」と一息に続けると、ジャッカルは急に立ち上がって、こちらへ駆け寄りながら「ちょっ、タンマ!」と私が言葉を継ぐのを止めた。
あ、やっちゃった。
喉元まで出かかった言葉が、ふつりと消えてなくなった。
今度こそ正真正銘の失恋か。
思わず俯くと、膝の上で無意識のうちに強く握りこんでしまっていた拳に関節が白く浮き出ているのが見えて、それはあっという間に涙でぼやけた。
よく考えてみれば私だって、自分から告白したのを綺麗さっぱり忘れているくせに、混乱に乗じてもう一度告白しようとするような奴、いくら男前でもお断りだ。
そりゃジャッカルだってそうだよね──
「…なあ、今度は俺から言わせてくれ」
「………、え?」
私の肌の色とは違う褐色が、にじんだ視界で私の肌を覆うようにゆっくりと入ってきた。
直後、手に温もりが触れて、それは私の手を優しく、けれど力強く包む。
瞬きした拍子、ぱたぱたと落ちた涙が、ジャッカルの手を濡らした。
「…泣くなよ、どうしたらいいかわかんなくなる」
「だ、って…振られる、って、思って」
「俺がお前を振る? なんでそうなるんだよ…昨日俺がどれだけ嬉しかったか、わかってねえだろ」
温かい手が私の頬に触れて、そっと前を向かせた。
ジャッカルの顔がびっくりするくらい近くにあって、その息遣いに心臓が跳ねる。
泣いて酷い顔だろうに、ジャッカルはとても優しく笑って、こつんと額を重ね合わせてきた。
直後に落とされた「ずっと好きだった」という囁きは、自分の心臓の音で聞こえなくなってしまいそうなほど小さくて、けれど確かに私に届いて、再び涙を流させた。
今度は嬉し涙を。