第69章 失楽園に咲く花は〔幸村精市〕*
「…ねえ、五感を奪うなんて嘘でしょう?」
──だって精市との行為は、五感が普段の何倍も過敏になっているもの。
私の唐突な問いに理由を求めた精市にそう伝えると、精市はひどく嬉しそうに笑って、私の肩を押してそっとシーツに縫い止めた。
さっきよりずっと、穏やかな始まり。
それでも濡らしてしまう私はきっと楽園へは行けないだろうけれど、精市と一緒ならそれでもいいやと、落ちてきたキスに思い切り応えた。
fin
◎あとがき
お読みいただき、ありがとうございました。
何度も嘆いてきたとおり、えろの描写は難しいです。
相当アブノーマルなプレイをさせない限りやることって大抵一緒じゃないですか、自分の語彙力のなさが露骨に出てしまう…
なので今回は志向を変えて、行為を書くというよりメンタルを書いてみようかと。
書ききれたという自信はあまりありませんが、いかがだったでしょうか?
脊髄が震えるっていう感覚、えろシーンじゃなくても私はたまにあります。
あまりに感動して畏怖を覚えるとき。
腰のあたりがぞくっとするんですよね…いわゆる、感動で「濡れる」っていう感覚でしょうか。
タイトルについてですが、私の解釈では「失楽園」という場所はないんですよね。
「楽園」の対義語ではなくて「楽園を追われ失うこと」という意味で(楽園の対義語はたぶん地獄ですよね)、となると失楽園に花が咲くわけがないんですけど、語感が非常に気に入ったので、あえて間違ったまま使ってます。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。