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短編集【庭球】

第7章 就活ブルー〔跡部景吾〕*


「久しぶりだな」
「うん」
「少し痩せたか?」
「ほんの少しね…って、ちょ、景吾?」
「んだよ、アーン?」

スーツを脱がしにかかった手を渚が止めようとするが、俺に止める気はない。
ジャケットもシャツも、一つ残らずボタンを外す。
のぞいた白い肌が、俺を掻き立てた。

「もう…」

渚の観念したような声を合図に、華奢な身体を抱き上げる。
ベッドに運んで優しく下ろしてやると、恥ずかしそうに目をそらした。

「少しじゃねえだろ、痩せたの。四キロ減ってとこか」
「えっ、なんでわかるの!?」
「お前のことはなんでもわかんだよ」

言い終わらないうちに、渚に口づける。
徐々に深く、激しく。
俺の苦手な口紅の味は、いつの間にか気にならなくなった。
渚が苦しそうに背中を叩くから仕方なく解放してやると、銀糸が名残惜しそうに俺たちを繋いで、消えた。

こくんと唾を飲み込んだ喉の動きが。
前よりもくっきり浮き出た鎖骨が。
ゆらゆらと潤んで揺らめく瞳が。
渚のすべてが、俺を煽る。

ご無沙汰とはいえ、キスしただけで理性がぶっ飛びそうで。
これまでにも何度も身体は重ねたはずなのに。
なんとか繋ぎとめた理性をたぐり寄せて、自分の余裕のなさに呆れた。
こういうところが渚には頼りなく見えるのかもしれないと思ったら、無意識に自嘲の笑いが漏れて。
肩で息をしていた渚が、不思議そうな顔をした。

「景吾?」
「…なんでもねえよ。それよりずいぶん余裕あんじゃねーの、アーン?」
「そんな…」
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