第5章 きみへ
多分私は狂っているのだと思う。異常者だ。大切な人を守るためならどんなことでも厭わなかった。人を殺すことも、人を不幸にするのも、人を拷問することも、自分を傷つけることも全部。その人に執着した。
その人の存在が私の前から消え、私は壊れてしまった。生きることをやめてしまった。そんな私を助けたのは他でもなく後藤さんだった。あの人に全く似てない下品で野蛮で馬鹿。だけど、唯一すこーし似てると思うのは私に向かって笑いかけてくれる笑顔。
「俺はあいつの代わりなんて出来ないけどよ。俺はお前に生きていて欲しいって思うぜ。だからそんなとこでくよくよすんな。居場所が欲しいなら俺のところにこい。」
その言葉で私は生きようって思った。あの人とは正反対な後藤さんだけど、こんな醜い私に生きろって言ってくれた。
その時思った。
「ああ。この人に嫌われたら私は終わりだ」
と。