第2章 二重人格
「ぇ…?」
『やめろッつってんだよ!!!!』
怒りに任せてあたしはお兄さんの腹部を蹴り飛ばす
腹を蹴られたお兄さんは、そのままベッドから落ちた
床にうずくまってせき込んでいるお兄さんを見下ろして言葉を放つ
『おい、最初に言ったよな?傷は付けるなって』
今までのあたしからは想像もつかないくらい低く威圧的な声でお兄さんに迫る
うずくまっているお兄さんのネクタイを掴んでさらに言葉をつづける
『あたしさ、キスマみたいな傷が残るやつって大嫌いなんだよね、分かる?だから最初に忠告したのになんなの?今テメェ何しようとした?つけたよな?』
「えっ…いや……つけてない……まだ…」
『まだ?!じゃあ後々は付けるつもりだったと?あぁ!?』
「あっ…ご…ごめ…」
なんだよこいつ、女に怒鳴られただけで泣いてんじゃねえよ
・・・飽きた
こいつのひ弱さを見た瞬間あたしは一気に怒鳴る気力も失せた
掴んでいたネクタイから手を放し、ソファに置いておいたバッグからもらったばかりの2万円を取り出し、床で震えているお兄さんに投げ返す
『金返すからこれでおしまい。あんたみたいなつまらない上に約束も守れない男となんて遊びたくないし・・・それに、言わなかったけど家族を大事にしない奴マジ許せねえんだよ・・・』
そう吐き捨ててあたしは服を着直してカバンを持った
部屋から出ようとしたとき、あたしはもう一つお兄さ・・・男に向かって言う
『あたしみたいな女に金使うんじゃなくてさ、ファンシー好きな娘さんに可愛いぬいぐるみでも買ってやれよ・・・。』