第9章 オネエ様と女子力
ポーン・・・
あたしの働いているエレベーターとはちょっと違う音が響いて最上階の社長室にやってきたあたしと及川さん
「スガく~ん。いる~?」
「あぁ!!!もぉ!!!」
部屋の奥からバサバサと何かがばら撒かれる音と誰かのイライラしている声が聞こえた
それでも及川さんは平然と部屋に入って行った
「スガ君今日も荒れてるね。」
「あぁ…なんだ及川かよ…今立て込んでんのよ、用がないなら帰って頂戴」
「いや用があるから来たんだって…」
そこにいたのは、温かみのある灰色の髪に太めの眉毛が特徴のお兄さ・・・ん?ではないな・・・
なんとなく女性っぽい雰囲気を感じる
「なによ…用ならさっさと言って頂戴」
「うん、明日さ梟谷のパーティあるの知ってる?」
「もちろん知ってるわよ。先週そこの社長がスーツ新調しに来たもの」
「そっか、なら話が早いや。あのね、ドレス作ってもらいたいんだけど…」
「は?」
マネキンにかけられた作りかけのドレスのようなものに布を当てながら受け答えしていたスガさん?は、急に手を止めて及川さんを睨んだ。
あっ、よく見るとスガさんすごい疲れてるみたい。目の周りクマだらけだし・・・
「及川…あんたは結構うちの店贔屓してくれるからだいたいの注文は受けてきたけど、悪いけど今回ばかりは受けられないわ。明後日予約のウェディングドレスができてないよの。それに手いっぱいだから、今回は他をあたってちょうだい」
「そんなこと言わないでさ、ほらこの子がドレス着る子」
と、及川さんの後ろにいたあたしを前に出す
スガさんは疲れ切った目であたしを見ていた
「どう?スガくん好みの子だと思うんだけど?」
「・・・好みなんてもんじゃないわよ」
あたしの顔をまじまじと見ていたスガさんが低い声でそうつぶやいた
やっぱりあたしみたいな芋女じゃこんな高級ブランドの社長の目に留まるわけ・・・
「何この子・・・あたしの理想ドストライクじゃないの!!!」