第7章 最初の演技とネコの店
街灯が流れていく高速を走っているG〇-Rの中で、さっきまで沈黙だった及川さんが急にしゃべりだした
「夜琉ちゃんってさ、どうして売りやってたの?」
『それ聞いちゃいますか?聞くのは野暮って言うんじゃないんですか?』
「いや、夜琉ちゃんって普通の高校生じゃん?親とか心配しないの?」
ガムいる?とちょっと辛めのミントガムをあたしに手渡しながら及川さんは質問を投げてくる
あたしは、ガムを口に入れて鼻にかかるミントの香りを感じながらしぶしぶ答えた
『…親は二人とも死んじゃったんです。』
「…え?」
『先にお父さんが病気で。んで、お父さんのこと大好きだったお母さんも後を追うように死んじゃったんです。』
「自殺ってこと?」
『はい。あたしが学校行ってる時に…もう10年位前ですかね』
「…恨んで…ないの?」
及川さんは言葉を選ぶように途切れ途切れに話を進める
でもあたしの口調はいたって軽やかだった
『…それが全く恨んでないです。むしろ悲しくもないです』
「えっ…どうして?」
『…どうしてでしょうね~』
「だって親が死んだんでしょ?自分を置いて死ぬまで会えない所に行っちゃったんでしょ?それでも恨んでないの?悲しくないの?」
あまりに及川さんが必死に言うからあたしは思わず及川さんを見る。及川さんは前を見て運転はしているけど、チラチラとあたしを見て答えを待っていた
『・・・だって・・・。』