第39章 愛しい子 *最終章*
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岩泉さんの愛車に乗って、あたし達はどこかに向かう
彼の愛車は、もうあの軽トラックじゃない。ちょっと前に買ったデ〇オに変わったから運転の方は申し分ない
「・・・。緊張してんのか?」
『…ちょっと、だけ』
「そりゃそうだよな…まぁ安心しろ。大丈夫だから…」
片手運転を可憐に決めている岩泉さんが使っていない方の手であたしの頭を撫でてくれた
それでようやく落ち着いたから、あたしは昼間に車に乗るのが久々だったから窓の外に流れる景色を見る。
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岩泉さんのデ〇オは、大きな柵の門と先の見えないくらいの長い塀に囲まれている場所。そこは、いわゆる刑務所。TVでしか見たことないくらいの場所だ。
黒尾さんにはここには来るなって言われてたから・・・
でも、今日は特別許してくれた。だって・・・
「あっ…」
『えっ…アッ!!』
大きな柵の門が急に開いて中から人が出てきた。
それは、木兎さんの秘書の赤葦さんだった。あたしは思わず車から降りて彼に駆け寄った
「あぁ、お久しぶりです。岩泉さん、夜琉ちゃん」
『お久しぶりです。…あの、今日は…』
「お前の元同僚か?」
「そうですね、過去の戦友に勝利報告を…」
同僚?戦友?誰のこと?
あたしはそう思っているけど、2人はあたしの知らない言葉を並べていた
「勝利報告?」
「はい、賭けをしていましたので…。それで、俺と賢二郎が勝ったと…」
「…そういうことか。」
「はい。では、俺は木兎さ…、社長のもとに戻ります。またね夜琉ちゃん」
『えっ!?…あっ、はい…?』
結局最後まで理解ができないまま、赤葦さんは近くでタクシーを捕まえて帰って行った。
『何話してたんですか?』
「大人の話だ」
と、岩泉さんはまたそう言って車に戻って行った