第39章 愛しい子 *最終章*
『へぇ~、裏ってこんなになってるんですか…』
「あぁ、悪かったな…。」
『いえ、大丈夫です。あたしも早く着いちゃったし。お仕事はどうですか?』
まぁまぁ…と言いながら岩泉さんはお店指定のスーツを脱いでいつものラフな格好に戻っていく。さっき泣いちゃったから設置されている洗面台で顔を洗っている。
「なぁ、その髪型は…俺が言ったからか?」
『まぁ…ちょっとびっくりさせたくて…』
「びっくりしすぎて心臓止まりかけた。だって、飛びついてきたのが紫乃さんだって一瞬思っちまうし…それなら、あいつも喜ぶんじゃねえか?」
ようやく着替えを終えて、いつものちょっと幼さが残る笑顔を見せてくれた。さっきの大人笑顔もよかったけど、岩泉さんはやっぱりこっちの笑顔の方がよかった
『喜んでくれますかね?』
「俺以上に泣くと思うし、むしろ気絶すんじゃね?」
という会話をしながら、スタッフルームを後にした。
先に菅原さんに挨拶をしてからというからまた社長室に戻った
「もう帰っちゃうんだ…つまんない」
『あぁ~…また暇になったら顔出しますので…』
「ホント!?楽しみにしてる♡」
と、あたしに近づいてきた菅原さんはあたしのおでこにキスをしてまた来てね♡と手を振った。あたしもそれに合わせて手を振ると岩泉さんに引っ張られるようにエレベーターに乗って店を出た
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「うん、元気そうでよかった」
菅原は、エレベーターに乗って行った2人を見送ってから安心したような表情をした。
「夜琉ちゃんは意外と強い子でしたね」
「うん…でも、一番はあいつらかな。彼女に出会ってよかったと思うよ」
「えっ…岩泉さんと及川さんですか?」
「うん…だってあいつら、今すごく幸せだと思うし・・・。」
菅原は、最上階から見える景色と共にあのバカ2人を考えていた。
「…それよりも、伊達班から何か来た?」
「はい、先日また別の麻薬班のことで潜入捜査を頼みたいって…」
「うん、じゃあ大地たちに言っといて。今回も暴れちゃえって」
菅原さんはとびきりの笑顔で山口に目配せを飛ばした
そんな目配せに山口はちょっと呆れ顔だ
「さすが、カラスを手なずける母ですね」
「母じゃないよ。俺はカラスのボスだもん♡」