第39章 愛しい子 *最終章*
お金をきっちり払って早々にあたしは、お店を出た
Motherの本店に向かって歩くと、丁度岩泉さんが買い物を終えたお客さんを見送っていた
あたしは、こっそり後ろから近づいていく・・・
『い…わ…い…ず…み…さん!!!』
「ぬぉ!?」
お客が見えなくなるまで見送れと言われているのを聞いたことがあったからあたしもそのお客さんに合わせるタイミングでゆっくり近づいて岩泉さんの背中に飛び乗った。びっくりしたけど岩泉さんはまだ20代の男だから倒れることはなかった
「おい夜琉、テメエなにす…だ…」
『へへっ、髪…切って来ましたよ』
どうですか?と切った髪の先を弄りながら首を横に傾けて岩泉さんを見る。なんか岩泉さんびっくりして何も言ってくれない
『…あの、ダメですか?』
「いや…ちょ、悪い…」
『えっ…岩泉さん…泣いて』「泣いてねえ!!」
あたしに背中を向けてポケットに入れていたハンドタオルで目元を拭っていた。あたしは岩泉さんの正面に立ってもう一度訪ねた
『岩泉さん?』
「いや…、なんか…紫乃さんに似すぎてて、悪ぃ…お前は、お前なのに…」
岩泉さんが嗚咽するくらい号泣しちゃってるから、あたしは仕方なく岩泉さんを誘導しながら店の中へ連れて行った
*****
「いやぁ~ん夜琉ちゃん可愛い~♡」
本店の最上階に連れて行くと、菅原さんが出迎えてくれた。泣いている岩泉さんはガン無視で髪を切ったあたしのことばかりだった
唯一岩泉さんを心配したのは、菅原さんの秘書の山口さんだった
「このショートならあのドレスとか、あとはコッチ系の下着とか…」
「あの、スガさん…俺、もう上がります…」
「はーいお疲れ~。でさ、夜琉ちゃん今から…」
「こいつと帰りますので…」
と、岩泉さんは強引にあたしを引っ張ってスタッフ専用の着替えルームに連れて行かれた