第39章 愛しい子 *最終章*
『じゃあ、お会計お願いします。』
「あぁ、会計いらねえよ」
時間は12:37
もうすぐ岩泉さんのお仕事が終わる時間だ。それに合わせるために終わってからちょっと暇そうな瀬見さんと世間話をしながら時間をつぶしていた
『えっ…でも…』
「若利が、お前が客として来たら絶対に金を払わせるなって言ってきたんだよ。俺が肩代わりするからって」
『えっ…牛島さんが?』
「何しても償いきれないから、せめてそれくらいはしろってさ…。あいつホント単純だよな」
獅音さんと瀬見さんが笑いながらそうやって言いながら片づけをしていた。
出所して代表なってから、牛島さんはうちに仕送りをたくさんしてくれる。お金はもちろん、なぜか無駄に高級な食品とか毎月必ず送ってくれる。だから・・・
『確かカット代って、3000円でしたよね?』
「えっ…だからいらないって」
『払いたいから払うんです!!!』
と、レジ横にバンッ!!と3000円ぽっきりを置いた
その場にいた獅音さんも瀬見さんも遠くでお客さんを相手にしている川西さんも、その川西さんにカットされているお客さんもあたしの方を見てびっくりしていた
「ホントにいいのに…」
『だって、あたし牛島さんにそこまでしてもらう義理ないし、むしろ紫乃さんの代わりに見守らないといけないとか思ってるのに…だからせめて払わせてください!!』
と、断固無銭で帰る気はないことをアピールした
シン…とした店内で、最初に吹いたのは瀬見さんだった
「ブッハ!ホント聞いた通りじゃん…ワガママ姫様様だな」
あたしが聞き分けの悪いワガママ娘だってことは、もうみんなが知ってるみたいだからみんなが笑っている
あたしはそれを見てちょっと勝ち誇った顔をしてしまった