第39章 愛しい子 *最終章*
「んじゃ、切ってくからな」
瀬見さんが髪を触りながら霧吹きで水をかけてきた
ホントにちゃんと専門学校は卒業したみたいで、すごく丁寧にやってくれた
『…あの、瀬見さん』
「ん~?」
『…あの、聞いちゃいけないとは思うんですけど…ホントに天童さんに会ってないんですか?』
「…まぁ、な…。あいつは一応組の裏切り者だ。若利にも釘刺されてるしよ」
それ以上聞くのはちょっとアレだなっていうのは、まだ高校生のあたしでも分かったからあたしはそれ以上は聞かなかった
それを察したのか瀬見さんは別の話題を振られた
「お前さ、もう高3だろ?受験どーすんだよ」
『ちゃんと準備してますよ?保育士の学校』
「保育士か…、なんでそれにしたの?」
『紫乃さんが岩泉さん達を助けたみたいに、あたしも子供たちのために何かしたいって思ったから…ってありきたりですかね?』
パッと顔を上げて鏡を見ると、その鏡越しに見えた瀬見さんや獅音さんの顔が見えた。あっありきたりでもいいんだと、ちょっと安心した
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「ほい、できたぞ」
『おぉー!!瀬見さん凄い!!私服ダサいのに凄い!!』
「お前一言余分だっての!!」
瀬見さんに切ってもらった髪を触りながらちゃっかり瀬見さんをディスった。あたしの髪は、ポニーテールの作れた長い髪とはかけ離れた短いけど綺麗なショートカットだった
あの写真に写っていた紫乃さんに余計に似ていた。自分でも思うくらい紫乃さんと同じだった。これなら岩泉さんも驚くと思うな・・・。