第38章 ワガママな子
「・・・。夜琉ちゃん…、俺は、もうやり直せないよ…」
『・・・なんで』
「俺、もうたくさん人を傷つけちゃったもん…。君のことも…岩ちゃんの事も、君の大切な人やお友達も…」
夜琉を抱きしめる及川の腕の力が強くなる。
彼も今にも泣きそうだった。
『・・・やり直してください』
「…だから、無理だってば。俺はもう…」
『やり直してください!!』
無理と言い続ける及川に対して、夜琉は逆にやり直せの一点張り。2人の言い合いが続いた時、ようやく黒尾が2人の間に入った。
「及川、あきらめて改心しろ。」
「クロ君…だって俺…」
「このワガママモードになったこいつは、もう止めらんねえぞ?」
傷だらけの黒尾は、及川に抱かれた夜琉を奪い取るように肩を抱きそのまま彼女に寄りかかる
顔に涙の後を付けて及川を睨む夜琉は、及川の知るいい子の夜琉でも、悪い子の夜琉でもなかった。
『・・・及川さん、あたしはいい子でも悪い子でもないです…。ただのワガママ女です。だから、及川さん…』
夜琉は、黒尾に抱かれたまま及川を見つめ、そしてまた涙を流して言った。
『あたしは、紫乃さんの…お母さんの代わりにはなれませんけど…及川さんとは、その…』
「夜琉ちゃん・・・」
夜琉が言いたいことが分かった及川は、彼女の言葉を止めた。及川は、それからは何も言わずに夜琉の頭を撫でた。夜琉がキョトンとした顔をしたのを見た及川は、また彼女に微笑んだ。