第38章 ワガママな子
「なっ!?」
『バカですかって聞いてるんです!!』
夜琉があまりの迫力で及川に問い詰めるものだからさすがの及川も言葉が出なかった
『及川さん、あなたは本当に…紫乃さんが好きだったんですか?ならなんで紫乃さんの願いを聞いてあげないんですか!!そんなの…ただの自己満足じゃないですか!!
あたしを殺して、牛島さんに勝ったつもりでそれで紫乃さんへの恩返しだと思ってたんですか?』
「…いや」
『いや?でも現にそう思ってやったんですよね!?幼気な17歳を他人の手で殺させておいて!!』
及川に対していろいろと言いまくっているくせに夜琉は自然に目から涙がこぼれていた。
これも子供ならよくある現象だ。必死になって訴えてそれはだんだん恐怖みたいな感情になって、しまいには泣きながら訴えてしまうようなアレ
「あっ…ごめ、夜琉ちゃ…泣かないで?」
『ん゛…泣いて、ないで…す!!及川さんは、やっぱりバカでず!!』
「…うん、そうかもね…」
『…んで、なんでやり直そうとか思わなかったんですか!!』
「うん…」
『及川さんには、岩泉さ…も松川さん、も…花巻ざんもいだ…ッのに…ッ!!』
「うん…」
及川は、顔中ぐしゃぐしゃで言葉も足りなくなってきた夜琉にゆっくりと近づいた及川は、そのまま号泣している夜琉をそっと抱きしめた。夜琉は顔も上げずに及川の服も掴まずにずっと顔を抑えて泣いた
『及川さんはバカです!!』
「うん…ごめんね…」
『バカ…ッ…、バカ!!』
「うん…」
『なんで…なんであたしや岩泉さんのことを信じないんですか、紫乃さんの言葉を信じなかったんですか?』