第37章 真実
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「そして…俺は、そのまま白鳥沢の総帥となった。成り行きとはいえ紫乃さんを…傷つけた。」
「でも殺したのは若利君じゃなくて俺。あの女ウザかったからね。好きとか…そんな感情くだらないし、若利君には必要ない。若利君が必死になってトップに立とうとしているあの姿、本当に美しかった。冷徹とは違う冷たい目に人を下に見るあの威圧感が…俺はすごく好きだった。高揚もした。
でも、それをあの女が汚した。若利君を惑わせて鈍らせて…トップになることを邪魔したんだ。そんな女、死ぬべきだったんだよ。
だから俺は、あの女もその娘も殺さないと思ったんだよ。
だから、君を利用したんだよ?及川君
ありがとうね、君のおかげで若利君は本来の・・・ッ!!!」
天童が楽し気に若利の話に付けたしていった時、天童の言葉が止まった。耳を裂くような銃声の音と共に
「…ッ!!」
「なっ…及川!!」
牛島と黒尾が、及川の方を見た。及川は話をする天童の肩口を持っていた拳銃で射抜いた。
及川が、初めて人を傷つけてしまった瞬間だった
「アレ~、人1人も傷つけられない及川君が、ついに人を傷つけちゃったね~」
「人…どこにいるんだよ…。俺が撃ったのは、ただの外道だ…今…、地獄に送ってやる!!!」
また1発、及川が天童を撃った今度は左の脇腹。おそらく左胸を狙ったと思うが、人を撃つことに慣れていないからか目標を射抜けなかった
だが撃たれた本人はまだ楽しそうだった。いや、さっきよりもうれしそうな顔をしていた。彼は、人を傷つけることだけでなく傷つけられることも大好きな男だった
「…へへ、いいよォ~及川君。もっとやりなよ…。そうすれば、君の大事な人をもっと裏切ることになるからね~」
そう言った瞬間、及川の手が止まった
やっと我に返ったのだろう、彼女・・・紫乃の言った正しい道・・・その道が分からないが、これだけは分かっていた
人を傷つけることは、いけないことだと・・・