第37章 真実
「…若利、覚。…あんた達ずいぶんかっこよくなっちゃって…見違えたわよ」
朝ごはんの支度をしていた紫乃さんは昔と変わらない笑顔を見せてくれた。
そんな笑顔の人を、殺すなんて・・・
「紫乃さん、逃げてください」
「えっ…」
「ちょ!?若利君!?何言っちゃってんの?鍛治君に言われたじゃん!!」
天童はそう言って俺の周りをウロウロする。
でも、俺はそれよりも紫乃さんに向かって話をする
「紫乃さん、俺は昔と変わっていません。貴女の望む白鳥沢のため俺はトップに立ちます。だが、貴女がいないならトップに立つ意味もない。だから、逃げてください。俺は…貴女を殺したくない」
らしくもないと思った。
俺はトップに立つためこの10年はできることはなんでもした。どんな境遇の子供でも容赦なく狩りトップに立つことだけを考えていた。
でも・・・これだけは、できなかった
「…ありがとう。でも、あたしは逃げないよ。ずっとここにいる」
「…なぜです。」
「ここで逃げたら負けたみたいでいやだから。あいつには負けたくない。」
食事の置かれたテーブルに手の平だけおいて俺達と向き合って話している。
「ごめんね若利・・・でも、あたしも昔と変わってない。子供たちを助けたいとそう思っているし、貴方達のことも大好きよ。だから…」
パァン!!!!
突然耳障りな音と共に、紫乃さんの腰のあたりに赤い花が咲いたように見えた。
違う・・・なぜだ・・・
「なぜ撃った・・・ッ天童」