第37章 真実
「若利、覚。こっち来な」
紫乃さんに呼ばれた俺達は白鳥沢の屋敷の庭に呼ばれた。彼女の目の前には大きな木があった。
「ほら見て。」
その大きな木に小さな鳥の巣があった。近くには1羽の鳥。何の種類の鳥かは分からなかったが、白くて綺麗な鳥だった。天童は冗談か本気か「おいしそう」とつぶやいた
「この子、巣から落ちちゃったみたいでね…」
彼女の手の中に震える鳥のヒナがいた。
天童がそのヒナをツンツンと弄る天童に「コラ、」と笑いながら止める紫乃さんは俺にヒナを手渡す。
「若利、この子持っててね」
しゃがみ込んでいた彼女が立ち上がって俺の身体を持ち上げる。身体が浮いた俺はヒナを巣に戻す。戻した瞬間、白い鳥が巣に戻った
「ほら、巣に戻ってよかったね。ありがとう若利、覚」
そういって俺の頭と天童の頭を撫でる。今から一緒に出掛けない?と言って俺達を外に連れ出してくれた
紫乃さんはいつもそうだった。
俺や天童に優しくて、厳しい教育の後はいつも遊んでくれた。俺自身、本当の両親も鷲匠総帥ほどではないが厳しかったし遊んだりする機会が少なかったからすべてが新鮮だった。
それ以上に、こんなにも誰かに優しくされて楽しいことを教えてくれて・・・
気がついたら、俺は紫乃さんを探していた。
どこにいても紫乃さんの姿を見つけては、そばに行った。そばに行きたかった
彼女が・・・好きだった