第36章 決戦
「おい及川、何する気だよ」
及川さんが掴んでいる方と逆の腕をつかんだ松川さんが及川さんを睨んだ。でも及川さんは動じることなく松川さんを見る
「何も?ちょっとお話しするだけだから。離してよまっつん」
まただ、及川さんのあの静かな威圧。それにはさすがの松川さんも腕を持つ手が緩んだ。
でもなぜか先に手を離したのは及川さんだった。及川さんがまた松川さんに近づいて何か言ったみたい
「…じゃ、よろしくね。…じゃあ夜琉ちゃん行くよ?」
今度は腕を掴まずにあたしに手を差し伸べた。あたしは素直に手を取っていつもと違うエレベーターに乗る
『こっちのエレベーター初めて乗ります。』
「だろうね、こっちは社員しか乗れないからね、乗るためには専用のカギが必要だし」
そう言いながら今言っていたカギを取り出してエレベーターを開けた。エレベーターが開いて中に入ると、フロアは1階と2階とRだけだった。
及川さんが押したのはもちろんR
「屋上なんて初めてでしょ?」
『はい。いつも最上階にはいましたけど、あのフロア部屋しかないですし上に行ける階段もなかったですし』
「そりゃそうだよ、あの部屋はエレベーター以外降りる手段ないんだから。だから君をあの部屋にしたんだよ?逃がさないために」
最初に疑問だったことが最悪のタイミングで解けた。
それであたしはいきなり最上階だったんだ。別に魅力があるなんて思ってなかったけど、それが理由ってなんか嫌だな・・・
「でも君はいい子だから、逃げたいとかやめたいって自分ら言わなかったからホントにいい子だよね」
『・・・あたしはいい子じゃないですって』